特殊清掃の豆知識

特殊清掃の現場で異臭除去の・・・

2024年06月20日 23:03

お客様からオゾン燻蒸機についてご質問があったので、今日はオゾン燻蒸機などについてお話させていただきます。

 

特殊清掃の現場で異臭除去のために使用されるのがオゾン燻蒸機(脱臭機)です。

あまり聞きなれない機械なので、どんなものか知らない方もいらっしゃるかもしれません。

オゾン燻蒸機とは、強力な酸化作用をもつオゾンを超高濃度で生成して発生させることで部屋の中のニオイを消臭するものです。消臭以外にも、除菌・防カビ効果・虫の忌避効果・花粉の不活性化などの効果もあります。

そもそもオゾン(О3)とは、酸素原(О)が3つに結合した状態のものを指していて、もともとギリシャ語の「OZEIN」(匂う)という意味からきています。オゾンはフッ素に次ぐ強力な酸化能力を持ちますが非常に不安定な物質で、空気中では分解して3つある酸素原のうちの1つが放出されて、残りの2つは安定な酸素分に変わります。オゾンが分解してできた酸素原は不安定なため、すぐに他の物質と反応して安定な物質に変化してしまうので、菌やニオイの原因となる物質が近くにあるとこれらに反応してしまいます。酸素原は不安定な物質ですが他の物質と結合することで安定するので、ニオイの原因となる物質と結合して安定しニオイの原因物質を酸化させて他の物質に変化・分類させることでニオイをなくさせます。このオゾンの酸化作用を利用して、オゾン燻蒸機はニオイの原因となる物質を酸化させて分解し消臭することができます。

 

しかし、オゾン燻蒸機はすべてのニオイを消臭できるわけではありません。消臭できるニオイとできないニオイがあるので、これからご紹介していきます。

 

●オゾン燻蒸機の消臭効果があるニオイは、生物(有機物)が関係して発生する下記のようなニオイです。

 

・部屋の中のニオイ

体臭・加齢臭・口臭・ペットのニオイ・タバコ臭・布や壁などに染み込んだニオイ・備品にしみ込んだニオイ・冷蔵庫、靴箱、床などのニオイ

・生活臭

生ごみ臭・腐乱臭・排水や下水溝のニオイ・洗濯物の生乾きのニオイ・靴のニオイ

・食品や調理の際のニオイ

魚・玉ねぎ・にんにく・チーズ・漬物・焼け焦げたニオイ・油

・産業関係のニオイ

下水処理場・食肉センター・病院・火葬場・肥料・牧場や畜舎のニオイ

 

上記の他に排水系からのニオイの消臭も可能で、これらはすべて生物が関係するニオイとなっており、その素になっている成分として尿のニオイのアンモニア、硫黄泉の卵が腐ったようなニオイまたは口臭のニオイの酸化水素やメチルメルカプタン、腐った魚のニオイのトリメチルアミンなどがあり、これらの臭い成分にオゾンが反応して消臭します。

上記に挙げたニオイの共通点は、有機質に関係して発生したニオイであることで、オゾンは上記のニオイとの酸化反応が大きいため迅速に分解して消臭することができるのです。

このことから、オゾン燻蒸機は有機質のニオイであればしっかり分解して消臭することができるといえます。


●消臭効果のある臭い

これは、その物質の表面処理に有効です。

臭気源となっているニオイの元(体液などの浸潤部の下処理による洗浄等を行わなければ、匂いは再び戻ります。)

 

●オゾン燻蒸機で消臭できないニオイは、オゾンから出た酸素原が反応しにくい化学物質のニオイです。

例えば、インク・塗料・ガソリン・グリス・ホルマリン・シンナーなどの化学製品のニオイやアスファルト・メッキ加工・殺虫剤・香水・接着剤・お菓に入っている香料・線香などが挙げられます。

化学物質由来のニオイを消臭できない理由は酸化しにくいからで、オゾン燻蒸機は、オゾンの強い酸化作用を利用してニオイの原因物質を酸化・分解して消臭しますが、化学物質由来のニオイは酸化しにくいため消臭効果が発揮されないのです。

 

ここからはオゾン消臭のメリットとデメリットをご紹介していきます。

 

オゾン消臭のメリット

・強いニオイの除去

オゾンの殺菌・脱臭・空気洗浄力は塩素の約7倍あると言われていて、強い臭気を放つキムチニンニク入りのボトル内部の臭気をわずか3分でほぼ無臭化できるほどオゾンの脱臭効果は強力です。

 

・残留性がないため安心

オゾンは不安定なガスのため、時間の経過とともに徐々に酸素へと変化していきます。大気中では分解して酸素原と安全な酸素分に変わり、水中では数秒から数十分で、空気中では数時間程度で酸素に戻るので危険性がありません。

 

・除菌効果がある

細菌やウイルスの細胞膜を破壊して、溶菌させる作用もあります。この反応は殺菌剤にはなく、オゾンの殺菌力の強さや殺菌反応の速さは他の殺菌剤と比べものになりません。大腸菌・黄色ブドウ球菌・化膿レンザ球菌などの細菌を低濃度で完全に殺菌できるほど殺菌力が強いと報告されています。

ホルマリンなどと違ってオゾンの除菌は残留性がなく環境に優しい除菌方法として、院内感染対策病院や老人ホームなどで院内感染予防効果を発揮していたり、レストランなどでも使用されています。

 

・耐性菌ができない

オゾンはウイルスや細菌の核そのものに働きかけて破壊や分解を行うので、耐性菌ができたりその耐性菌による二次公害を引き起こす心配がありません。

 

オゾン脱臭のデメリット

・高濃度のオゾンで劣化や腐食する物質がある

ゴムやプラスチックなどの材質でできたものはオゾンによって腐食してしまう可能性が高いです。また、布地などの材質は劣化や脱色されることがあるので注意が必要です。

 

・特有のニオイが発生する

オゾンは残留性はないのですが、使用時や使用後すぐにはオゾン臭と言われる独特のニオイが発生します。オゾン臭は、自然界でオゾンが多く存在する高原・日差しの強い海岸・森林の空気のニオイ・プールで感じる青臭いニオイなど個人によってさまざまな感じ方をして、ニオイを感じる濃度も人それぞれ異なります。

オゾン濃度が高くなればなるほどニオイも強くなり、中には気分が悪くなる人が出てくることもあります。

 

・オゾン燻蒸機の使い方には注意が必要

オゾンは濃度によっては人体に悪影響を与えることもあるので、オゾン燻蒸機を使用する際にはオゾンの性質や人体の影響を十分に理解した上で、取り扱いマニュアルを熟読してマニュアルに従って使用しなければいけません。

 

オゾンは酸化力を持ち反応性が高い物質のため消臭効果は強力ですが、濃度が高い場合には毒性を示し、作用が強いぶん使用方法を誤ると人体に害を与える可能性があります。水分に吸収されにくいので呼吸器系に取り込まれた場合には、肺の深部にまで到達してぜんそく発作、慢性の気管支炎、肺水腫、肺機能低下などの呼吸器障害を引き起こす恐れがあります。また目や鼻腔、喉の刺激になる場合もあり、人体に悪影響をおよぼす可能性が高いのはあきらかです。人体に悪影響を与えるオゾン濃度は0.1ppm以上とされていて、その環境に長時間いると人体に有害となると報告されています。

またオゾン燻蒸を行っても、別のニオイが加わったり同じニオイが再び発生すると脱臭効果は無くなりまたニオイがでてくるので、その場合にはもう一度オゾン燻蒸を行わなければいけません。

 

まとめ

 

オゾンは薬剤を使用することなく空気中の物質による化学変化で、菌やニオイの元となる成分を抑えることで除菌・脱臭・防カビができ、残留性がないので安心して使用することができます。しかし消臭できないニオイもありますし、そもそもオゾン燻蒸機のみでニオイを完全に除去することはできません。

オゾン燻蒸機の効果を発揮するためには、可能な限りニオイのもとやニオイを発生させている物質を除去することが大切です。状況次第でオゾン燻蒸機を使用して不快なニオイの完全除去を行い、これからもお客様に納得していただける施工を行って参りたいと思います。